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味ってどこで感じるの?

みなさんこんにちは、歯科衛生士の木村です。 当院では、いらっしゃって下さっている患者さん対象に唾液検査を行っています。そこでアンモニアと口臭の関係を説明をする際、舌のお話をしています。舌も歯と同じくらいお口の中では重要な役割をしています。今回はそんな舌の役割について説明していきます。   【基本味の味物質を見てみよう】 「甘味は舌の先で感じる」というお話、聞いたことないでしょうか。ほかにも「苦味は舌の奥で感じる」「塩味や酸味は舌の側面で感じる」など、舌の部位ごとに感じる味が違うという説(味覚地図)がありますが、じつはこれは古い説なのです。今回は、私たちがどうやって味を感じているのかをお話ししましょう。 食べ物の味は、アミノ酸や核酸、糖類といった水溶性の化学物質=「味物質」によりもたらされます。甘味、酸味、塩味、苦味、うま味には、それぞれの味を生み出す味物質が存在します。 代表的な例を見ると、甘味の味物質は、ショ糖、果糖、ぶどう糖など。ショ糖はいわゆる砂糖です。果糖やぶどう糖は、果物やはちみつに多く含まれます。これらはむし歯菌のエサにもなりますね。 酸味の味物質は、クエン酸、酢酸、乳酸などです。柑橘類に含まられるのがクエン酸、酢に含まれるのが酢酸です。乳酸さんヨーグルトなど乳酸菌を利用した食品に多いですね。 塩味の味物質は塩化ナトリウムなどです。 苦味の味物質はカフェイン、モモデルシン、テオブロミンなど。カフェインはコーヒーやお茶、モモデルシンはゴーヤなどの苦味のある植物、テオブロミンはカカオに含まれます。 そしてうま味の味物質は、アミノ酸の一種のグルタミン酸、核酸の一種のイノシン酸、グアニル酸などです。グルタミン酸はこんぶやトマト、イノシン酸はかつおぶしや肉、魚、グアニル酸は干したきのこ類に豊富に含まれます。とくにこんぶはグルタミン酸の含有量では随一です。   【味物質が味として認識されるには。】 さて、これらの味物質は、どのよ うな経路をたどって味として認識されるのでしょうか。 舌の表面には舌乳頭という組織が点在しています。ベーッと舌を出したとき、ボツボツと見える突起が舌乳頭です(牛乳をひと口飲んでから鏡の前で舌を出すと、とてもはっきり見えます)。味物質は、唾液に溶けてまずここにたどり着きます。 舌乳頭のなかには味蕾という器官があります。花のつぼみのような形をしている味蕾は、数十個の味細胞が集まってできています。 味細胞のなかには味物質を受け取る受容体があり、この受容体から味物質の情報が味覚神経を通じて脳に伝えられ、食べ物の味が認識されます。味物質ごとに受け取る受容体は決まっていて、たとえば甘味の味物質の受容体がうま味の味物質を受け取ることはできません。 舌の表面に点在する舌乳頭。そのなかにある味蕾の、そのまたなかにある味細胞。さらにそのなかにある受容体が、味を感じるセンサーです。というわけで、味は舌の特定の部位で感じるのではなく、舌全体に分布している器官で感じているのです。 ちなみに、辛味は味覚神経ではなく、熱い、冷たいなどの刺激を伝える三叉神経を通じて脳に伝わります。脳に認識される経路が違うため、基本味の仲間には入りません。