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歯周病が肝臓に影響!?

皆さんこんにちは!中里デンタルクリニック歯科衛生士の田口です。梅雨が明け、最近とても暑くなってきましたね。熱中症に十分気を付け、こまめな水分補給を取っていきましょう。   さて今回は、歯周病と肝臓の病気についてです。心血管系疾患や呼吸器系疾患、糖尿病、早産・低体重児出産など、さまざまな全身の病気に関係しているといわれる歯周病ですが、その歯周病が、肝臓の病気の進行にも影響している可能性があると報告されています。   飲酒によらない非アルコール性脂肪肝炎のかたは、歯周病になっていることが多いのでしょうか?歯周病菌のなかでも原性の高いポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)の陽性率(検査きおける陽性者の割合)を、「健常なかた」と「非アルコール性脂肪肝のかた」、「非アルコール性脂肪肝炎のかた」で調べてみました。 健常なかたのPg菌の陽性率は21.6%に対し、非アルコール性脂肪肝のかたのは46.6%になっています。また、非アルコール性脂肪肝炎の陽性率も51.9%と高い数値を示しています。   Pg菌は、多くの歯周病菌と同じように、細胞壁の外側にLPS(リポポリサッカライド、リポ多糖)という非常に毒性が強い物質をもっています。ふつうは歯周病菌に身体のなかには入ってきません。しかし、歯周病になっている歯があると、歯みがきをしたときに歯ぐきのバリアが壊れて血中に菌が入っていきます。実際歯周病のかたが歯みがきをしたあとにその血液を採取して培養すると、歯周病菌が見つかります(ふつう血液内は無菌です)。 歯周病菌が血液中に入ってくると、炎症を起こしたり、動脈硬化を進めたり、糖尿病を悪化させたりいろいろな悪さをします。なかでも肝臓は血液の流れが非常にゆっくりなので、菌が定着しやすい場所です。肝臓には、脂肪やエネルギーを一時的に貯蔵し、必要に応じてからだ各所に送る働きがあります。 Pg菌が肝臓に行くと、毒素であるLPSの存在を関知した肝臓は、敵に襲われたと認識し脂肪やエネルギを全身に送る働きをやめてしまいます。肝臓から全身に毒物をばらまかないようにするためです。体内の免疫により菌やLPSが駆除されるまでは、肝臓は送る働きを抑えます。すると、外に送れないままなので余計に脂肪が肝臓に溜まります。溜まった脂肪が肝炎につながる理由はまだ解明されていませんが、「脂肪毒性」という、脂肪酸が増加し炎症を起こす作用が生じていると想定されています。   飲酒を原因としない脂肪肝、脂肪肝炎を予防するために1つは運動することです。肝臓はエネルギーの一時的な貯蔵庫です。エネルギーの消費量が増えれば、肝臓に脂肪が溜まるのを防げます。 2つ目は食生活を改善することです。消費する以上のエネルギーを摂取してしまうのが脂肪肝の原因です。食べ過ぎないのが大事です。早食いは満腹感が得られにくく、食べ過ぎにつながります。むし歯や歯周病などでよく噛むことが難しいのなら、すみやかに治療を受けましょう。果物の糖である「果糖」はそのまま溜まります。また、満腹感を生じさせないためいくらでも摂れてしまいます。健康にいいからと、食べ過ぎはよくありません(ソフトドリンクに含まれる「果糖ぶどう糖液糖」も果糖の一種です)。 3つ目は睡眠時無呼吸を治療することです。睡眠中に酸欠状態になるとレプチンというホルモンが出てきて、やすくなるといわれています。 最後に歯周病の治療をすることです。治療すると、肝機能の数値が目に見えて改善する(ALTの数値が低下する)かたもいます。軽度の脂肪肝炎ならば回復する可能性がありますので、歯周病のかたはぜひ歯科で治療を受けましょう。ただし、治療して良くなっても、その状態が続かないといけません。症状改善後も歯医者さんに通い続けることが大切です。   また、皆さんに定期検診をおすすめしています。今は大丈夫と思っていているかたも油断は禁物です。お口の健康、さらに身体の健康を守るためにもメインテナンスにいらしてください。お待ちしております。